HEROES

鳥川雛太の小説、イラスト、ステンドグラスなどを置いてます

未来予報士.1

蝉がうるさいよくある夏。夏休みが一ヶ月後に迫っていた。しかし彼にそんなことは関係ない。ただの平日、朝からヘッドホンをして音楽を聴いていた。自分のベッド。自分の部屋。

春に起きたあの事件がきっかけで、16歳になる頃には不登校になっていた。

時渡未来。今日もお気に入りのフード付きのトレーナーを着ている。

 

1 不審者現る

 

誰もいない家で1人、インスタントラーメンを食べていた。考え事をしていたら少しのびて不味い。兄貴が作ってくれるのは絶対に美味しいのに、こんな小さなことでも差をつける気か。

はっきり言って、兄貴のことはこの世で一番嫌いだ。と言うより、妹と親友以外の人間は要らない。俺のことをちゃんとわかってくれるのは妹とそいつだけなんだ。

しかし、不登校のままというのもやはり問題だ。どこかで心機一転したいが、機会と勇気がない。

大きめのため息を吐くと、二階から足音が聞こえた。今家には俺しかいない。なんだ、強盗か?とりあえずフライパンを構えて階段を上った。

足音がしたのは俺の部屋だ。よりにもよってちくしょう。お下がりなりに高いノートパソコンが無事なことを祈る。

「誰だそこにいるのは!」

ドアを思いっきり開いて大声で言った。

「やぁ。こんにちは。」

ドアの開く音にも臆せず、奇妙な奴がテーブルの前に座っていた。

夏なのに分厚いベージュのコート。深く被った赤のキャスケット

声から女だろうとわかったが、正体は全くわからない。

「僕は未来予報士の千世(ちよ)。君を最もいい未来に導くために10年後から来たんだ。」

ほぉ。最もいい未来ね。

「まるで俺には未来を選ばせるつもりは無い。そういうわけだな?」

図星だろうか。言葉に詰まる。

「まぁなんでもいいよ。とにかく帰れ。俺にはいい未来なんざ来ねぇよ。」

「そんなことは無いよ!」

突然千世が叫ぶ。少し驚いた。

「…10年後から来た証拠を見せろ。そうすれば信用してやらんでもない。」

「君がそう言うとわかってたから。ほら、このお菓子のラベル見てよ。」

「…2026年…。」

「そのお菓子、結構もちが良くてね、来年まで食べられるんだよ。すごいよねー。

どう?信じる?」

少しムッとして他にも見せろと言ってみた。

すると、それも想定済みだと電車の定期、見たこともない写真、カレンダー。あらゆるものを出してきた。

信じる他無いようだ。

 

しかし、どうやってタイムスリップなんて。

佳己ならまだしも。

「タイムスリップの仕組みは詳しく言えないけど、10年後にはそんな技術もあるんだよ。」

それも想定済みか。

 

家族が帰ってきて、どうコイツについて説明しようか迷っている間に家族に溶け込みやがった。どんなコミュ力してんだよコイツ。

 

「あ、未来!明日は学校に行ってみようか!!」

笑顔俺に向かって声をかけてきた。

女だから殴らないが、一体どういうつもりだ。