神様アンケート.1
『お母さん、今日の晩ごはんはなあに?』
穏やかな黄昏時。柳田尚子はこの日も物思いに耽っていた。巨大な宗教団体『ノーデル』に息子と娘が拐われてからもう23年になる。2人が生きているのなら、今年で26歳となる。酷い目には遭っていないか、ちゃんとご飯は食べているのか。心配だけが募り募って癒されることはない。
夫はあの日、奴らに立ち向かい男1人を殴り飛ばしたところで他の奴全員に銃で射殺された。無念だっただろう。自分だって悔しい。
『山田アナ、現場は今どういう状態でしょうか。』
「はい、ミサイルの落下した地点は焼け野原。銀行など頑丈な建築物しか残っていません。」
『彼らは一体何を目的として我々を攻撃するのか。全てが謎に包まれています。以上、本日のニュースでした。』
平和主義、倫理観。そんな薄っぺらい正義を盾に国は全く今となっても動かない。
二人の顔が頭をよぎり、司会者が登場した騒がしいバライティ番組を無表情で消した。